【研究報告】ハンドケア施術効果とラベンダーエッセンシャルオイルの濃度が皮膚細胞に及ぼす影響

2024年11月3日(日)第27回日本アロマセラピー学会学術総会

第10回日本ハーブ療法研究会学術講演会 シンポジウム発表

この研究報告は、上記の催しで発表されたものです。

目的

ハンドケア施術の効果を臨床的に調べ、施術効果を細胞レベルで解明した。さらにラベンダーエッセンシャルオイル(LO)の適正な希釈濃度を検討するために表皮角化細胞にLOを曝露し、生存率および細胞形態を観察した。

方法

ハンドケア施術の効果を調べるためタキサン系抗がん薬で治療を受ける乳がん患者に施術をおこない副作用であるしびれ改善効果を確認した。さらに医療従事者を対象として緊張緩和に効果があることを調べた(昭和大学倫理委員会承認2024-104-A)。しびれ改善メカニズムを調べるためにマウス(C57BL/6J)を用いて血流測定および伝導速度を観察し、神経細胞(SH-SY5Y細胞)を用いてハンドケア施術に模倣した振動を与えた後の形態変化を観察した。 LOの適正な希釈濃度を検討するため表皮角化細胞 (HaCaT細胞)を用いてLOの生存率をMTT法で測定しHE染色と走査型電子顕微鏡 (Flex SEM1000)で細胞の形態変化を観察した。

結果

しびれを感じる乳がん患者にハンドケア施術をおこなうと改善傾向を認め、医療従事者に対しては施術後、緊張緩和が観察された。マウスに同じ施術をおこなうと血流と伝導速度が改善した。SH-SY5Y細胞にハンドケア施術に模倣した振動を15分間与えたのち、走査電子顕微鏡で細胞表面の形態変化を観察したところ、静止状態では2μm前後の短い神経突起が振動15分後には6~17μmまで伸長した。 HaCaT細胞を用いたLOの生存率はLOの濃度が高いほど低くなった。 HE染色および走査型電子顕微鏡による形態観察では、LO無添加のコントロールで上皮細胞特有の敷石状の形態が観察されたのに対し、高濃度のLO曝露では細胞質の広がりが少なく成長抑制がみられた。

考察

本研究によりハンドケア施術はしびれ改善に効果があり、緊張緩和に役立つことが示唆された。マウスに対する施術により血液循環を増強し伝導速度を速めたことで、副作用であるしびれの症状を改善したと考えられた。神経細胞に施術に模した振動を与えると神経突起が伸長したことから施術によって神経の伝導速度が速まり、神経再生に効果があることが示唆された。表皮角化細胞ではLOの濃度が高いほど細胞生存率は低くなりHE染色で細胞質の広がりが少なかったことから、高濃度のLO曝露では細胞の成長が抑制されることが示唆された。LOに含まれるリモネンと酢酸リナリルには有意な細胞毒性が報告されていることから、高濃度LO曝露により細胞増殖は減少したことが考察される。

佐々木晶子
佐々木晶子

昭和⼤学医学部 薬理学講座において、医科薬理学部⾨講師を務める。
公益社団法⼈⽇ 本薬理学会学術評議員。医学博⼠

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