【研究報告】フィトセラピーによるハンドケアを用いた糖尿病教育入院患者の不安やストレス軽減への試み

目的

フィトセラピーの効果により糖尿病教育で入院された患者の不安感やストレスが軽減できるのか効果を明らかにする。

実践内容と方法

2019年6月から11月の6ヶ月間、当院一般病棟に血糖コントロールを含めた初回糖尿病教育入院されたA氏72歳男性、入院時HbA1c10.7%、HDS‐R30点、B氏54歳男性、入院時HbA1c10.0%、HDS‐R30点、C氏72歳女性、入院時HbA1c12.4%、HDS‐R29点の末梢神経障害のある2型糖尿病を持つ3名を対象とした。糖尿病教育指導プログラムと併用し、フィトセラピーによるハンドケアを5回行った。入院期間中、ハンドケアセラピー前後の対象者の話された言葉を全てテキストマイニング(感情分析)しウイルコクソン検定で比較した。5回のハンドケアセラピー直前、直後にVASを使用し気分スケール値をウイルコクソン検定で比較した。対象者の看護、または指導にあたった医療スタッフ全員には、対象者の話された言葉をカルテまたは看護記録への記入を依頼した。ハンドケアセラピーが対象者3名に不安やストレスの軽減を試みると共に、対象者の行動変化を質的で評価した。倫理的配慮として、対象者に口頭で説明を行い、同意を得た。

結果

対象者3名にハンドケアセラピーを5回行ったそれぞれの施術前後の気分スケールの結果として、全員がハンドケアセラピー直後に、「気分が悪い」から「気分が良い」の方向を示し、p=0.043と有意差を認めた。テキストマイニング法で感情分析(悲しみ)(恐れ)(喜び)をウイルコクソン検定で表した結果、それぞれp=0.043と対象者3名の有意差を認めた。入退院時の気分スケール値はA氏=1→1、B氏=10→2、C氏=4→1へと変化があった。対象者全員が自ら退院時目標を立案され、「目標に向かってやっていく自信はあります」と話され、笑顔で退院された。

考察

対象者3名のハンドケア前後の感情分析に有意差があった理由として、ハンドケアセラピーが対象者の神経系と心に受容感と安心感を持たせ、糖尿病治療に対する恐怖や不安によるストレスを軽くすることができたと考える。また、心のケアにより対象者の気持ちに良い変化が現れ、治療継続の向上、前向きな姿勢と自信へと繋がることができた。

発表の動機

私が糖尿病療養指導士として糖尿病患者様の指導にあたり2年目となりますが、これまでに入院してこられた糖尿病教育入院患者様からは、入院で強化インスリン療法、運動療法、食事療法などにより血糖コントロールはできたものの、ほとんどの患者様が糖尿病合併症の恐ろしさを知り、理解をされる毎に、「退院後の生活に糖尿病と関わりを持って療養生活をすることに自信が無い、不安である」という言葉を残し退院され、また退院指導で決められた目標の達成や継続ができず、初回外来受診されていることが現実である状況でした。

教育入院された糖尿病を持つ患者様の病気の病因、病態が多様であり、糖尿病患者様の性格、心理的背景、社会的背景、環境要因など、多種多様、千差万別であることから、糖尿病療養指導士は限りなく多くの情報と、臨機応変に対応するためのいくつものスキルが必要となってきます。

糖尿病療養指導士として、私自身の推測される原因は、糖尿病プログラム指導入院された患者様への退院指導をする上で、初めから糖尿病患者様の十分な情報を得ているわけではなく、熟練したスキルを有しているわけでないため、患者様から学ぶ姿勢ではなく、ある程度の情報とある程度のスキル(教科書や最新テキストからの知識)で臨床現場での療養指導に望んでいたことだと考えました。
患者様の本当の抱えている心の闇や、今まで誰にも伝えられていなかった患者様からのメッセージを受け取ることが出来たときに、患者様自ら退院後の本当の生活目標を見いだすことが自信に繋がるとともに療養生活を不安やストレスなくモチベーションUPとその継続ができるのではないかと考えました。

方法(やり方)として患者様の情報の多くを聞き出し、患者様自身が目標を見いだすにはどうすべきか、professional learning climateという夕陽ヶ丘佐藤クリニック院長佐藤利彦著「Dr.サトウの糖尿病療養指導心得7か条」の本から患者様から学ぶ姿勢として以下のタイトルを学びました。

  • 患者様に心配を示す
  • 患者様を尊重する
  • 患者様を信じる
  • 患者様に対して謙虚な態度である
  • リラックスできる空間を創造する
  • 聴く姿勢を示す
  • 個人的な気持ちを話す
  • ともに歩む姿勢を見せる
  • 熱意を示す
  • ユーモアとウイットをもつ

この10タイトルを取得し患者様の本質を見抜くことができ、不安を取り除くことと患者様のモチベーションUPと継続ができるのは、フィトセラピーハンドケアインストラクターを持つ私にとって、患者様にハンドケアトリートメントが的確な方法と思いました。

フィトセラピーでのハンドケアは、手に触れて、心地よい時間を共にすることで、受容感や安心感を与えて心の安定を持たせる心を伝えるハンドケアです。ハンドコミュニケーションは、言葉、表情、手で触れることの3つを兼ね備えたコミュニケーションで、患者様の緊張がとれ、安心感を持ち、信頼関係を築くことができ、スムーズに本音をお話してくれるのではないかと考えました。
さらに、患者様が今まで言わなかったこと、言えなかった心の闇を聞き出せる、そのことにより患者様の退院後の目標がさらに見いだせ、明確になることからご自身で決めた目標の維持と達成に対し、次回外来受診までに自信を持って糖尿病と向き合う療養生活に取り組むことができ、そのことがさらに糖尿病患者様の人生にとって一番大切なことである糖尿病合併症予防に繋げられると考えました。

最後に

ハンドケアトリートメントが糖尿病教育入院患者様の前向きな気持ちと行動に変化があり、必要不可欠な看護ケアだと感じ取りました。

生澤 由美子
生澤 由美子

医療法人財団梅田病院
看護師として医療法⼈財団梅⽥病院に勤務。
⽇本リウマチ財団登録リウマチケア看護師/⽇本糖尿病療養指導⼠。

ページのトップに戻る