国立療養所邑久光明園は岡山県岡山市にある国立ハンセン病療養所です。美しい瀬戸内海に浮かぶ、長島にあります。
ハンセン病とは、らい菌によって引き起こされる慢性の感染症です。末梢神経がおかされることによって生ずる神経障害がもっとも重要な症状で、現在は抗生剤を中心とする治療法が確立されており、完治する疾病です。感染症法(医事法)の前文には「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。」と記載されています。現実として、1943年までは有効な治療法がありませんでした。
現在の邑久光明園には、ハンセン病の障害・後遺症に加え、高齢化に伴う心身のトラブルを抱えながら、大勢の人が療養生活を送っています。それらの診療・リハビリテーション・生活支援を行うのが、邑久光明園に勤める職員の方々です。
去る2019年11月26日、ソフィアフィトセラピーカレッジの校長・池田明子と、西九州大学の小浦誠吾教授が、邑久光明園で約30名の職員さんへ向け、「認知症予防とハンドケアセラピー」の講演を行いました。
校長・池田明子のレポート
入所されている方の平均年齢は86歳。社会からの差別と偏見、過酷な人生を送られた方々の晩年を見守る職員の皆さんに、ハンドケアが受け入れられて大変うれしい経験でした。
私は臨床検査技師の学生だった頃に、学校の授業の一環で東京都多摩市にあるハンセン病の療養施設・国立多摩全生園に行ったことがあります。その時、何か役立てることはないものか?と思ったことがありましたが、約40年を経てこのような機会をいただけたことに感謝しています。また尊敬するきくち体操の創始者・指導者である菊池和子先生も、ハンセン病に苦しんだ詩人の桜井哲夫さんの支援者でした。一度だけ生前の桜井さんにお目にかかる機会がありました。桜井さんは見えない目、瘢痕の残るお顔に微笑みを絶やさず、周囲の方を気遣われるご様子に大変感動いたしました。
今回の講演会をご縁にして、ハンドケアが少しでもハンセン病で苦しんだ皆様のお役に立つことが出来ましたら、本当に光栄なことです。